『インベスターZ』というマンガをご存じでしょうか。
東大合格請負漫画『ドラゴン桜』の作者が描いた、投資学園漫画です。
2018年にはドラマにもなりました。
株式投資学園漫画「インベスターZ」
創立130年の超進学校・道塾学園に、トップで合格した財前孝史。
入学式翌日に、財前に明かされた学園の秘密。
各学年成績トップ6人のみが参加する「投資部」が存在するのだ。彼らの使命は3000億を運用し、8%以上の利回りを生み出すこと。それゆえ日本最高水準の教育設備を誇る道塾学園は学費が無料だった!
中学生が投資? 3,000億円を運用?? それが130年間続いている???
設定からかなり気になるこの漫画は、ストーリーとして面白いだけではなく、実際の投資に役立つ格言の宝庫でもあります。
マンガなのですらすら読めますが、全21巻もあるので、全部読むのは意外とたいへん。
というわけで、各巻からひと言ずつ、実際の投資に役立つキーワードを選んで解説します。
順次更新します!
- 株に自分の考えなんかいらない。株は法則でやれ!
- 良い株なんか見てんじゃない!株はボロ株を見ろ!
- その企業について論文を一本書けなければ株を買ってはいけない!
- 株は「でっかい市場」を狙え!
- バブル破裂の危機を避けるには、頂点の手前で売り抜ける!
第1巻:株に自分の考えなんかいらない。株は法則でやれ!
インベスターZの記念すべき第1巻。主人公の財前が投資部に入部します。
第1巻のあらすじ
創立130年の超進学校・道塾学園に、トップで合格した財前孝史。
入学式翌日に、財前は各学年トップが集められた「投資部」に入部させられる。
彼らの使命は3,000億を運用し、8%以上の利回りを生み出すこと。
その利益は学校の運営資金になる。
そして投資部は、その存在自体が秘密にされている・・・
役に立つひと言
株に自分の考えなんかいらない
株は法則でやれ!
投資部に連れてこられて、いきなり100億円渡される主人公 財前。
怖いものを知らない財前はいきなりゲーム会社の株を30億円買う。
翌日10%値上がりして3億円の含み益。
「上がり始めたところだからさらに様子を見る」と言う財前に対し、
高校3年の投資部キャプテン神代(かみしろ)は「さっさと売れ」と言います。
「どうしてですか?」と聞く財前に対して、キャプテンが返した言葉が
「それが法則だからだ。株に自分の考えなんかいらない。株は法則でやれ!」
意味するところ
投資には感情のコントロールが大事。
別の格言では「アタマとシッポは、くれてやれ」
もうかっているときでもしつこく追いかけず、アタマ=最高値の部分はくれてやるつもりで利益を確定させる。
逆に下がっているときに、シッポ(=底値)に行き着く前に損を確定させる。
これはメチャクチャ大事!
わたしは2017年秋から冬にかけて持っていた仮想通貨が、数倍の価値に膨らんでいく経験をしました。
その時思っていたのは、もっと上がるかもしれないから、もう少し持っておこう。
もう少し、もう少し、が1か月続いたところで、コインチェック事件もありバブルが弾け、持っていた資産は数分の一に。
アタマ=最高値の部分はくれてやるべき、ということを強烈に、体を張って学びました。
法則で売買するには、ツイン指値を入れるという方法があります。
「100円で買った株を、130円になったら売って利益を出す。90円になったら損切りする」と決めて、130円の売り指値と、90円の売りの逆指値を同時に入れる、という手法です。
これなら感情を交えずに、法則で取引できます。
また、もっと徹底するなら、買いも売りも一切感情が入らない自動取引に任せてしまうという方法もあります。
分散投資なら、テオやウェルスナビといったロボアドバイザー。
仮想通貨の自動売買ならクオレアというサービスがあります。
第2巻:良い株なんか見てんじゃない!株はボロ株を見ろ!
投資部に入った主人公 財前が、先輩たちから投資の基礎を叩き込まれます。
第2巻のあらすじ
主人公 財前が初投資で30億円もの資金をつぎ込んだのは、自分が好きなケーム会社だった。
利食い、損切り、リスクヘッジ……
財前に叩き込まれる、あまりに無鉄砲な道塾投資部130年の教え。
初めての投資でも絶対に負けたくない13歳が導き出した勝利の鉄則とは――。
役に立つひと言
良い株なんか見てんじゃない!
株はボロ株を見ろ!
定例の投資会議に出た主人公 財前。
そこは投資部の6人が運用している計3,000億円のポートフォリオを、それぞれが報告する場。
財前はなにを買おうか悩んでいて「買おうとは思っているんですけど、なかなか良い株が見つからなくて」と発言します。
それに対してファンドマネージャーであるキャプテン神代が発した言葉が
「良い株なんか見てんじゃない!株はボロ株を見ろ!」
意味するところ
神代はさらに続けます。
「お前は金を掘りに行くヤツか・・・金が出たと聞いたらスコップ担いで掘りに行くバカだ」
1848年アメリカ西海岸で金鉱が発見されゴールドラッシュが起きました。
その時一番儲けたのは、金を掘った人間ではなくて、スコップやツルハシを売った人。大量の人員と物資を運ぶために鉄道を敷いた実業家。
良い株を探すことは、金を掘ることと同じ。
つまり、すでにうまみのなくなった話に飛びつこうとすること。
そうでなく、儲かる株はいまは見向きもされないが、いずれ飛躍的に伸びると信じられる会社の株。
それを神代は「良い株なんか見てんじゃない!株はボロ株を見ろ!」と言っています。
第3巻:その企業について論文を一本書けなければ株を買ってはいけない
主人公 財前が、学校創設者の親族の女の子に出会います。恋の予感!?
第3巻のあらすじ
道塾学園投資部で奮闘する財前孝史の前に、道塾創設者の玄孫、藤田美雪が現れた。
9歳から株を始め、1万ドルを2000万円にまで増やした同級生の美少女に、闘争心をかきたてられる財前。
そして美雪も、自身が通う超名門女子校・桂蔭学園で「女子投資部」を設立!!
友達とともに、10万円からの個人投資を始める。
役に立つひと言
その企業について論文を一本書けなければ株を買ってはいけない
道塾学園の創始者のひ孫の子供である美雪は、中学の同級生を誘って、女子投資部を作ります。
最初の仲間は2人の友だち。どちらも投資の経験はありません。
そんな2人に、投資歴3年の美雪が伝えたのが、世界最大の投資会社を経営するウォーレン・バフェットのこの言葉「その企業について論文を一本書けなければ株を買ってはいけない」
意味するところ
論文を書くほど企業のことを調べるなんて無理、って思います?
じぶんが興味のない会社だったら、そのとおり、無理でしょう。
でも「自分が好きで好きでたまらなくて、周りの人にも勧めたくなるサービスを提供している会社」だったらどうですか?
わたしにとっては、AppleとAmazonがそういう会社です。
わたしは、この2社のいろんなサービスを、周りの人も使ってもらい、ハッピーになってもらいたい。
使ってみてよ!と言うために、なんでそんなに自分は好きなんだろう?と考えることがよくあります。
そうなると、その会社の競合に対する強み・弱みや、将来的な展望もぼんやりと見えてきます。
そういう会社なら、論文の1本くらい書けるはず!
というわけで、わたしの中では、こう意訳しました。
その企業について論文を一本書けなければ株を買ってはいけない
⇒自分が好きで好きでたまらなくて、周りの人にも勧めたくなるサービスを提供している会社の株を買え
第4巻:株は「でっかい市場」を狙え
主人公 財前が、ベンチャー投資に乗り出します。
第4巻のあらすじ
「このお宝、売っ払っちゃいましょうよ」
道塾学園投資部が長い時間をかけて収集してきた金庫の中の現物資産をすべて売却、現金化して、ベンチャー投資に充てたいと言い出した財前孝史。
そんな前代未聞の提案に藤田家が出した条件は……当主に直接会って、説得すること
役に立つひと言
株は「でっかい市場」を狙え
財前は、投資部がベンチャー投資を始めること、そのために道塾学園の現物資産の美術品などを売り払うことを提案します。
認められた財前は、有望な投資先を見るけるため、バイオベンチャーの勉強を始めます。
これまでの資産は、リスクを抑えて確実なリターンを狙うため上場株で運用することに。
そこで財前が出した結論が、リスクを抑えるなら「株は「でっかい市場」を狙え」です。
意味するところ
ここで財前が投資しようとしているのは、リターンが小さくてもいいので、ローリスクで運用したい資金です。
小さな市場は、まだ成熟していない市場。
急拡大する会社も出てくるが、市場全体がしぼむリスクがあります。
それに対して、大きな市場はプレイヤーの数も多く、お金の流通も活発。
加えて情報も多くて分析もしやすい、というメリットがあります。
たとえば、日本のゲーム市場は8,000億円、映画市場は1,900億円。
それに対して、自動車市場は50兆円、家電60兆円、建築50兆円、外食30兆円、医療40兆円、生命保険40兆円と、2ケタも大きな市場です。
確実なリターンを目指すなら、このような大きな市場で、じっくり投資先を見きわめるべきなんです。
ちなみにわたしは、18年頭に絶好調だった工作機械業界に目をつけて「オークマ」株を買いましたが、いま確かめると市場が2兆円と小さかった・・・
その後、米国トランプ政権が中国への関税制裁を決めると、工作機器のメインユーザだった中国企業が投資を控えたため、業界全体が一気に冷え込みます。
オークマもその影響をもろに受け、株価はわたしが買ったときから、なんと▲28%も下がっています。
好調な業界だからというだけで選ぶのではなく、ちゃんと市場規模を見ればよかった、といまさらながら思います・・・
というわけで、確実なリターンを目指すなら「でっかい市場を狙え」!
第5巻:バブル破裂の危機を避けるには、頂点の手前で売り抜ける!
主人公の財前が、明治時代にタイムスリップし、投資部立ち上げの瞬間を目にします。
第5巻のあらすじ
お宝を売っぱらって15億円を手に入れた財前孝史は、道塾投資部と財前家のルーツを探るために、初代主将のノートを開く。
「明治三十七年二月、日露戦争開戦セリ」。紐解かれる、明治から平成までの日本経済の歴史!
そして気づけば、なぜか財前は明治時代の道塾にいて、目の前に現れたのはなんと財前にそっくりの生徒。
役に立つひと言
急激に上昇したものは、必ず急降下して元に戻る
バブル破裂の危機を避けるには、頂点の手前で売り抜ける
これが鉄則なのです!
日露戦争の勝利を機に、好景気により一般人も投資を始め、株価のバブルが始まる。
当時の道塾の幹部たちはそれに乗り、さらに株の買いを進めるべきだというが、ひとり反対するのが財前龍五郎。
主人公 財前孝史のひいおじいさんです。
彼が語るには、16世紀のオランダ、17世紀のイギリス、フランスでも、バブルがはじけて株が大暴落した。
10年前の日清戦争後も株価の急騰と暴落が起きた。
そしてこう続けます。
急激に上昇したものは、必ず急降下して元に戻る
バブル破裂の危機を避けるには、頂点の手前で売り抜ける
これが鉄則なのです!
意味するところ
わたしも痛い目を見て、同じように信じるようになりました。
それは、2017年冬〜2018年1月前半の仮想通貨バブル。
ビットコインを始めとする仮想通貨の値段がどんどん上がり、取引業者はテレビCMをガンガン打つ。
それを見た初心者が口座を作り、取引を始めることで、さらに相場が上がる。
その中でも一部の人は、こう言っていました。
「この値上がりは理屈では説明できない。17世紀のオランダのチューリップ相場だ。もうすぐはじける」
そしてその言葉の通り、しばらくするとバブルがはじけます。
2018年1月16日〜17日の仮想通貨暴落はなぜ起きたのか
しかし、私を含めた多くの人が、じぶんに都合のいい主張を信じてしまいました。
それは、「いまの相場上昇はこれまでにない歴史の変化の結果であり、過去の商品の値動きは参考にならない。まだまだ上がる」という、いま見ると根拠のない主張です。
このようなバブルの中で、『いまはバブルだ!』と見抜くことは可能なのか。
答えは「可能」です。
株でも仮想通貨でも、値段がどんどん上がっていくときには、ニュースを丹念に見ましょう。
最初は「このまま力強い値動きが続くだろう」という解説が多いのですが、途中から「目標を引き上げる専門家もいるが、この動きは理屈では説明が付かないという専門家もいる。」というふうにニュアンスが変わります。
慣れていないと、さらに値上がりすることを期待して、「目標を引き上げる専門家もいる」だけ目に入り(それ以外を見なかったことにして)、持ち続けてしまいます。
ここで注意すべきは、「この動きは理屈では説明が付かない」という言葉です。これが出てくることがバブルの兆しです。
これを見たら勇気をもって売り抜ける!
まさに1巻の「アタマとシッポは、くれてやれ」。もう少し上がるかもしれない、と思っても、アタマ(最高値)はくれてやるつもりで、売り払うのです。
すべて売り払うのが惜しければ、半分だけでもいい。
ここで一部でも売り抜ければ、暴落したあとに買い増す原資になります。
まとめると、「この値上がりは説明できない」という意見が出てきたら、バブルを疑うべき。
5巻までは以上です。
6〜10巻はこちら。