2018年4月6日にコインチェックがマネックス証券の100%子会社となることが両社から発表されました。
コインチェック事件に巻き込まれて2か月とちょっと。大きな進展があり感慨深いところです。
翌4月7日の日経新聞には、提携の裏側がいろいろ載っていて興味深かったので抜粋してまとめます。
コインチェックの提携相手はヤフーや大和證券も
日経新聞によると、提携交渉には100億円超になりかねない訴訟リスクが一番の壁になったとのこと。ヤフー、大和証券と交渉をし、大和証券とはかなり突っ込んだ話まで進んでいたようです。
- 2/13にコインチェックが会見した時に提携を模索していたのはヤフー。ただその後ヤフーは訴訟リスクを避け、登録業者のビットアルゴ取引所東京への出資に方向転換。
- 大和証券とも提携交渉を行った。もともと両社は「コインチェック証券を立ち上げよう」と17年に意気投合していた。訴訟リスクを切り出す買収案も作ったが金融庁が認めなかった。
さらに大和証券が筆頭株主の登録業者マネーパートナーズ(※筆者注:サービスは未提供)に巻き取る案も作ったが、金融庁が「仮想通貨業界の信頼が失墜したなか、同業支援はあり得ない」と認めなかった。 - マネックス証券は「訴訟リスクも含め全てを引き受ける」と断言。背景にあるのは本業の株式仲介のシェアの低さと、仮想通貨交換業への参入の道のりの長さ。訴訟リスクも覚悟の買収で、仮想通貨交換業への参入までの時間を買った。
36億円という破格の安さでの買収について
わたしが買収報道を知ったときに最初に感じたのは「え、たった36億円で買収?」という疑問でした。
盗難にあったNEMの補償を460億円のキャッシュで実行した会社です。
数倍の現金を持っていると考えると、それだけで買収額は1,000億円を超えるのでは、と想像していました。
しかし日経の記事を読むとその背景がよく分かります。
日本経済新聞:コインチェック、460億円補償完了 危うさ抱える高収益
- 仮想通貨交換所は相場の最大10%程度の利ざやを乗せて売買している。しかし相場の急落と新規参入による競争により、利ざやをこれまでのように稼ぐことができない可能性が高い。
- マネックス証券にとっては、コインチェックについて金融庁の登録許可が出ずに廃業するリスクも念頭に置かないといけない。
- 既存株主は、廃業しなければ今ほどではないとしても収益を生み続けると考える。
- マネックス証券は既存株主を納得させるために「今後3事業年度の利益の2分の1を上限に現在の株主に支払う可能性がある」という条件を付け、折り合った。
コインチェックの営業全面再開とIPO
資本提携の記者会見では、コインチェックの営業の全面再開(今はまだできない仮想通貨「購入」のことを指すと思います)とIPOの時期についても言及があった模様。
日本経済新聞:マネックスG社長、コインチェック「IPO目指す」
- 仮想通貨交換業者への登録と事業の全面再開は2か月後程度を目標にしている。
- いずれIPOをして強くしていきたい。
- 「コインチェック」の社名はブランド価値があり、残す。
まとめ
コインチェックを通じて、仮想通貨の世界に足を踏み出し、その後もいろいろな経験をさせてもらったわたしにとって、コインチェックは特別な存在です。
コインチェックの存続のためには以下がベストだと思っていました。
コインチェックが実質、送金再開の見通しを出せない状態に
- セキュリティが高い取引所と合流してその象徴としてブランド名を変える。使いやすいUXと扱うアルトコインの豊富さは残す
※ただ、アルトコインのうち「暗号通貨」(Moneroなど)については、コインチェックが仮想通貨取引所として登録できない理由かもしれないので、ある程度減るかもしれませんが。- 合流するとしたら、セキュリティが高いと言われる取引所(QUOINEX:コインエクスチェンジやビットポイントなど)や、他分野でビックネームのSBIグループなど。
1のブランド名変更については、マネックス証券はそのつもりは無いようです。
ただ、今「マウントゴックス」という取引所があったとして、そこを使おうと思う人がどれだけいるか、と考えたら、早いことブランド名変更をした方がいいのでは、と強く思います。
2.の合流先として、マネックス証券は非常に心強いパートナーだと思います。ぜひそのグループの中で存在感を発揮してもらいたい。
と、かなり上から目線で書きましたが、コインチェックは私にとって仮想通貨という新しい世界にいざなってくれた伝道師のような存在です。
これまでのようにユーザ目線に立ったサービスを続けてほしいと切に祈りますし、これからも使っていこうと思います。